関東稽古を終えて 2020.9.1-

 

関東での稽古を終えて、いよいよ明日から豊岡に入る。

(この文章が公開されている頃にはすでに豊岡にいるだろう)

関東での稽古はこれまでに比べて過度な緊張とストレスの連続だった。6月と7月にも公演を打ったのだが、情勢が変わっていく中で、環境が明らかに変わっている。

いつ誰が体調を崩すかも分からないし、そもそも感染しているかもしれないし、もっと言えばそんな環境の中、メンバーを危険にさらしてまでやる意味があるのかという葛藤の連続だった。もちろんそれは今も続いているのだが、しかし、それでも我々ができるのは表現であり、精神の接触でしかないのだと私は考えている。

もちろん、誰かの感染やそれが疑われる症状が出た場合は躊躇なく即刻公演の中止を決めるつもりでいる(主催が我々ではない場合もあるので我々だけでは決定できないのだが)。

 

これまで我々だけではなく、関わる全ての人が普通ではない状態の中で動いているのを感じてきた。全員がギリギリの状態で動いているからこそ、普段以上に衝突やすれ違いが多いように感じもした。実際に衝突もあった。

 

大げさに誇張しているつもりはない。今の状況を極度に悲観的に捉えて不安を煽るようなつもりもない。

様々な考え方があるだろうが、少なくとも私はそう感じてきた。これまでだって一部を切り取れば似たような状況はあっただろうが、ここまで右を見ても左を見ても似たような話をよく耳にすることもない。

 

じゃあなぜやるのだ、と改めて問われそうだが、何度回っても帰ってくるところは同じだ。他の業種の全ての方々と同じように、私は演劇が仕事であり、今こそ表現という精神の豊かさの享受が必要だと信じているからであり、それが私に生きる意味を感じさせるからだ。

 

今回の作品のテーマは「暴力」だ。これは昨年から据え考えてきた。しかし、そのとき思い描いていたところから「暴力」はどんどん拡張し膨大になり敏感になっていった。それを考えていると現実に何度も押しつぶされそうになった。しかし圧倒的な現実にこそ表現は立ち向かっていかなければならない。と、そう思うからこそ、負けずに踏ん張り続けていた。そのうち、もはやなんの「暴力」であるかとかはどうでもよくなっていって、今やってることそれ自体が「暴力」との戦いになっていったように思う。

だから、何か具体的な特定の暴力に限定して作品は作っていない。今の環境そのものが「暴力」だと思って作品を作っている。

環境の中で誰しもが加害者にも被害者にもなりえてしまうのだと思う。それが今の世界なんだと思う。

しかし、ありきたりなことかもしれないが、それで問題になるかどうかは結局その後のコミュニケーションだ。これまでも今回もそれでなんども救われてきた。

 

物騒な言葉が並んでしまったが、稽古はこれまで経験したことないぐらいに楽しんでいる。今、創作はめちゃくちゃに楽しい。そんな楽しい時間でできた作品を少しでも他の人たちと共有できたら本望である。

 

明日、豊岡に入って、明後日から現地で、実際のトラックを使って、最後の稽古が始まる。ここからが本当のスタートだとも感じている。まだまだどうとでもなってしまうだろう。最後まで創造を楽しんでいたいと思う。

2020.9.1 岩澤哲野

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