演劇を通じて、人間らしさや”無駄なもの”の意味を見つける。「libido:Fシリーズ episode:02 最後の喫煙者」



libido:は今年、本拠地・松戸に新たに構えたアトリエ・せんぱく工舎F号室にて、一人芝居を3本行う「libido:F」シリーズを展開しています。


5月には、1作目となる「libido:Fシリーズ episode:01 たちぎれ線香」を上演。この12月には、2本目となる「episode:02 最後の喫煙者」を発表します。


まもなく初日を迎える12月初旬、「libido:F」シリーズを展開することになったきっかけや、「episode:02 最後の喫煙者」にかける思いを、libido:代表・演出の岩澤哲野と「episode:02 最後の喫煙者」に出演する緒方壮哉に聞きました。



俳優一人一人ともっとコミュニケーションを取りたい、濃いことをやってみたい


今年libidoが展開している「libido:F」シリーズ。どんなきっかけでスタートしたのでしょうか?


岩澤(以下I):libidoは、もともと自分1人のプロデュースユニットだったところから、4人のメンバーが入って団体になりました。さらに2019年の4月の終わりに、ここ松戸に拠点を移して。 2020年は、コロナ禍でなかなか思うように活動ができなかったんですが、とにかく表現をし続けることが重要かなと考えて、結果的に、様々な場所で公演をやりました。



緒方(以下O):大変だった。


I:5都市6公演やったからね。その後「来年何やろうか」って考えていた時に、その活動の中で、個人やひとりひとりの活動が目にはいる機会が多かったように思えて。一人一人の生命力みたいなものが、印象深かったんですよね。俳優一人一人ともっとコミュニケーションを取りたい、濃いことをやってみたいなというところから、一人芝居を3本やるのはどうかなと考えたのが始まりです。


会場は、全て松戸にあるアトリエ、せんぱく工舎ですね。


I:2020年は外の都市でやることが多かったから、改めて自分たちの地元、拠点の活動を探りたいねとも話していて。同じくらいのタイミングで、このF号室を借りる流れになったんです。F号室を借りて、自分たちの新しいアトリエもできたから、じゃあそこで作品を作ろうと。

新しい場所で、さらに自分たちの新しいレパートリー作品になるようなものを作っていけたらいいね、という話をしていました。



I:「libido:F」というシリーズの名前は、単純に言ってしまえば、このアトリエがF号室だから、ということなんですが...この空間でつくる作品シリーズ、みたいな感覚があったんですよね。

あと、Fという言葉には、奥行きというか、想像力が膨らむ感じがありますよね。今、僕らが新しいことを始める上で、このFという言葉がもつ未知数さみたいなところもいいんじゃないかという話もして決めました。



自分でエネルギーを生み出してつくる一人芝居


I:この「libido:F」シリーズは、俳優それぞれに企画を持ち込んでもらい、それを僕が演出して、企画を持ち込んだ俳優が一人芝居として演じる、というフォーマットでやっています。


O:実は、てつさんが「libido:F」シリーズの構想を話す前から、俳優同士では「一人芝居やりたいね」っていう話をすでにしていたんですよね。


I:そうそう。libido:を立ち上げてから、みんな色んな企画を持ち込んでくれてたんですよね。でも、それを実現する機会をなかなか作れなくて。

でも今、様々な活動のしづらさがある中で、自分たちの力を貯えるじゃないけど、それぞれがやりたいことをやってみてもいいんじゃないかって思ったんだよね。だから、libido:のみんなに対しては、「お待たせしました」みたいな気持ちがあります。(笑)



O:ありがとうございます。(笑) 

でも、蓋を開けてみたら、やっぱり一人芝居って大変だなと。演技って、俳優が2人以上いて、相手との対話やエネルギーをもらったり返したりっていうコミュニケーションがあって、初めてやりたいことができるようになるんですよね。

一人芝居の場合は、エネルギーを自家発電しないといけない。あるいは、演じている空間からエネルギーをもらうしかない。


I:俺も前から一人芝居やりたいとは思っていたけど、このせんぱく工舎の空間があったからこそ、「やってみよう」って言えたのかもしれないね。

それに、この空間を、”自分たちの場所”にしていくためにやっている感覚もあるんですよ。自分たちのアトリエを作って、初めての演劇公演が一人芝居だから、メンバーそれぞれがこの場所に対しての思いというか、記憶を作っていく、みたいな気持ちもありますよね。



現実を現実として語るだけでなく、くだらない部分も真面目な部分も含めて演じたい


緒方くんが今回の題材として選んだのは、筒井康隆さんの小説「最後の喫煙者」。どんなことを考えて選ばれたのでしょうか?


O:一人芝居の題材について考えていた頃、ある会社で「従業員は勤務中だけでなく、出勤前の決められた時間から、喫煙禁止にする」っていうニュースをみたんです。そのニュースをみたときに、何か恐ろしさのようなものを感じて。


僕は、タバコやお酒みたいに、どちらかといえば体に悪いとされているようなものが好きなんですよ。無駄とされるようなものを自分の中に取り入れることが、心地よく感じて。

でも今世の中に、どんどん合理化されたものが良いとされるような、管理されていくような雰囲気があるなと思っていたんです。

かつて子供のとき読んでいた漫画や小説が、現実化してきているような。



O:そんなときにふと、筒井康隆さんがこういう話を書いていたなって思い出したんです。

現実にはこんなこと絶対にありえないって思われてたけど、今現実に起きている。そういうことってタバコだけではないなと感じていて。現実を現実として語るだけじゃなく、それをおもしろおかしく、くだらない部分も真面目な部分も含めて公演できると、演劇としての幅がすごく出るんじゃないかなと思いました。



自分自身でどうにかしなくちゃいけないからこそ、対話を重ねる


先ほど稽古を見せてもらったのですが、2人はすごくたくさん話しながら、演じ方や動き方を決めていきますね。これは一人芝居だからこそなのでしょうか?


I:俺の最初の師匠が、対話して演出をしていくタイプの方だったんです。なので、libido:においては、今回に限らず、こうして対話をしながら作っていくことが多いですね。


O:ただ、今回は一人芝居なのでいつもと違う部分はたくさんあります。普段は、俳優がそれぞれの解釈を持ち寄って、それをすり合わせながら作っていくんです。例えば、他の人が演じたやり方に対して、じゃあこうするのはどうかなって、演出のてつさんも交えて話して、形にしていく。

でも今回は、僕が主体になってお芝居を作るので、いつもよりアイデアや自分のやりたいことが出るけど、それを客観的に見る目線がない、というのが大きな違いですね。普段は、他の俳優の視点や動き方から気づきを得て作っていくことができるけど、今回は常に自分が考えてないといけない。



I:演出側としては、ずっと一人の俳優と対峙しなくちゃいけないから、時間コントロールの難しさはあるなと思いますね。例えば、普段は行き詰まったら、じゃあちょっと違うシーンやろうとかっていうことができるんです。でも今回はそれができない。

あと、今回は1日大体6時間の稽古をしているんですが、ずっと稽古し続けることは難しいので、どう息抜きするかっていうこともポイントですね。自分にとっては、俳優と対話をすることが、息抜きのひとつになっています。


O:今回は本番になる会場で稽古もしているので、常にリハーサルができるっていう状態なんです。なのでその場で「てつさん、この机使えません?」って話したり、いつも以上に演出家とやりとりをしながら作っている感覚はありますね。自分でどうにかしなくちゃいけないことが多いからこそ、演出家と俳優のやりとりが多くなる、ということもあるんじゃないかなと思います。




空間や俳優が持つ素養も含めて、あらゆるものが戯曲になる


演劇は普段、戯曲と呼ばれるものや台本を演じるものが多いと思いますが、今回は小説がベースですね。


I:もともと僕が台本を書かないので、普段のlibido:でも、基本的に戯曲を扱っていない時は台本がないんです。


O:今回も、稽古初日に「台本どうしますか?」って話をしたら、てつさんが「とりあえず小説全部暗記してもらっていい?」って言ってきて。(笑) 



I:僕は台本を書かないので、文字や文章だけで舞台をイメージすることが苦手なんですよね。だから、舞台上で起こってることそのもの、舞台という空間が、僕にとっては台本のような感覚が強くて。


O:戯曲であれば具体的な指示が書かれていることも多いんですが、小説の場合は指示がない分、余計に自分たちでイメージを具現化していく感覚がありますね。例えば、議事堂の上にいるシーンでは、てつさんと「この机を議事堂にしましょうか」とか話しながら、セリフを空間に馴染ませるようにして、シーンを作っていく。


あと、小説だと話すことを前提にしていないので、すごく長いセリフが続いたりするんですよ。じゃあここはどう演じようか?って考えた時に、ラジオにしてみようかとか、ラップにするかとか色々なアイデアが出てきて、形になっていきますね。


I:小説や戯曲じゃないものから演劇を立ち上げる時は、言ってしまえば、全部が戯曲なんです。俳優が持っている素養も含めて、あらゆるものが戯曲になるっていう感覚がありますね。



演劇を通じて、人間らしさや、“無駄なもの”の意味を伝えたい



公演まであとわずかですね。今回の作品を、どんなものにしていきたいですか?


I:この作品は、人間くさい作品になったらいいなと思います。愛おしい人間くささみたいなものが、ちゃんと表出されている作品になっていったらいいなと。


O:僕、物語のすごく好きなところって、なんだかよくわからないけど感動するっていうところなんです。演劇をみたり小説を読んだときに、なんだかよくわかんないんだけどグッときてしまったみたいな。そのグッときた経験が、ふとしたときにフラッシュバックして、「あの経験はこれだったのか」って思う瞬間がある。

物語を通じて、そうした時間や概念をぶっ飛ばして感動に出会える、ということが僕はすごく好きなんです。そういう感動がお客さんに伝わったらいいなと思って演劇をやっている。


愛らしさ、愛嬌っていうのは、お客さんの前に立ったときに、「あの俳優のこと知らないけど、何か惹きつけられてしまうな」って感じさせるようなものだと思うんですよね。演技を通じて、そういう”何か”を出していきたいです。


それに、このお話自体、人間くさい話でもありますよね。タバコというもの自体、人間にとっては無駄なものかもしれないけど、ある意味では人間を情緒的にしたところもあるんじゃないかなと。孤独が孤独じゃなければいいなって思います。


I:そうだね、でも今世の中にそういう無駄なものが本当に不足しているんだなって思うから。そういうものがあってもいいんだよ、っていうことは言ってあげたいなって思うよね。


O:喫煙者がタバコを吸って救われてきた部分もあるように、そういう一見無駄なようなものって、たくさん世の中にあったはずだと思うんですよね。そうしたものが一気に無くなっていっている世の中で、この演劇を通じて、そういうものがあったんだよっていうことを、改めて採掘していけたらいいなと思いますね。



「libido:Fシリーズ episode:02 最後の喫煙者」は、12/10(金)から上演スタート。

「episode:01 たちぎれ線香」の追加公演と合わせてご覧いただける日もあります。

ぜひF号室に足を運んで、ご覧になってみてくださいね。


(文章:原田恵、写真:大蔵麻月、原田恵)


 

「libido:Fシリーズ episode:02 最後の喫煙者」


▶︎公演日程 2021年12月10日(金) 19:00       11日(土) 13:00/17:00       12日(日) 11:30/15:30       17日(金) 19:00(た)       18日(土) 13:00(た)/17:00       19日(日) 11:30/15:30(た)       24日(金) 19:00       25日(土) 13:00/17:00(た)       26日(日) 11:30(た)/15:30 ※受付・開場は各回開演の30分前より ※(た)…5月に行ったepisode:01『libido:F:たちぎれ線香』の追加公演 ▶︎チケット 一般 2500円/学生 1000円/ 回数券(3回分)※ 6000円 ※Fシリーズを通しでご観劇いただく方へ、最大1500円分お得なチケットです!

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会場:せんぱく工舎1階 F号室 〒270-2254 千葉県松戸市河原塚408-1





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