libido:SPECIAL

​#1

岩澤哲野/大蔵麻月/大橋悠太/緒方壮哉/鈴木正也

​〈libido:青い鳥〉

沖縄公演直前特別座談会

利賀演劇人コンクールより2年。

ノーベル文学賞作家メーテルリンクの代表作にして、不滅の夢幻童話劇「青い鳥」。

新体制のlibido:にて再び挑む!

 

libido:は今年度の元号の切り替えに重なり、千葉県松戸市を拠点とし集団化する運びとなった。

集団となり初の上演作品は、2017年の利賀演劇人コンクールで初演し、優秀演出家賞二席を受賞した「青い鳥」。

代表の岩澤がソロユニット時代に発表し、大きな転機になった作品でもある。

令和に突入し、世界が今なお大きく変動する中、ぼくたちは一世紀以上前に描かれた“幸福”についてのテキストを上演する。

今回、そんな時代に集団化するlibido:と「青い鳥」についての座談会を設け、上演場所である沖縄、東京、茨城、そして家族の話をテーマに、ぼくを含めメンバーの岩澤哲野、大蔵麻月、大橋悠太、鈴木正也に語ってもらうこととなった。現代における幸福とは一体なんなのだろうか。

本企画は仮に「libido:SPECIAL」と題し、今後も内容を変え、libido:のコンテンツとして配信したいと考えている。

(構成・進行=緒方壮哉)

libido:と家/団地

 

緒方壮哉 今日は、とりわけlibido:や「青い鳥」について話してもらえればと思います。ぼくらのことをご存じない方のほうが圧倒的に多いと思うので、まず自己紹介からお願いできますか。

一同 libido:です!

緒方 よろしくお願いします。ざっとお名前をお願いします。

岩澤哲野 theater apartment complex libido:です。

緒方 団体の名前からですね。長いですよね。

岩澤 2019年4月30日から今のこのメンバーで集団化しました。もともとはぼく1人のユニットだったんだけど、それまで様々なひとと一緒にやってきた中で、集団化に至りました。それで、「団体名変える?」みたいな話になったんだよね。集団化するなら別にもとのlibido:じゃなくてもいいかなっていうことはぼくも思ってい

た。なので、改めてみんなで考えてもいいんじゃないかって思ったんですが、「libido:はそのままでいいんじゃないか」と。

緒方 そうですね。

大蔵麻月 当時、正也まだいなかったよね?

 

鈴木正也 おれはまだいなかった。

岩澤 そっか。正也まだいなかったか。

緒方 まだ、正也が入るかどうか答えを出していなかった時ですね。

岩澤 そうだ。それで“theater apartment complex”が冠として決まった。

“apartment complex“で団地を意味するんだよねつまり、演劇団地libido:になる。

緒方 直訳するとね。

大蔵 そもそも団地(画像①)から演劇を考えるってことが集団のテーマとしてあったもんね。

画像①libido:ロゴ デザイン=坂田機械:団地をモチーフにしたデザインになっている。

 

 

緒方 そうそう。千葉の松戸市にある住宅団地で演劇を興したいっていう目標があって、そこからでしたよね。“complex”っていうのが、複合とかそういう抽象的な意味もあるし。

 

岩澤 complexいいねとか言ってね。

 

緒方 こんな長くなったりしてね。大変な思いするとはね。

 

岩澤 でもね、あくまでも冠だから。

 

大蔵 そうですね。

 

岩澤 我々はあくまでもlibido:なんだよ。正式名称言っちゃうと長くなるけど、皆さんからもlibido:と呼んでもらえれば、全然大丈夫です。

 

緒方 苗字が変わったみたいなものだからね。

 

岩澤 そうそう。

 

鈴木 なるほど。

 

緒方 ちょっと増えたんで、冠変えますみたいなね。

 

鈴木 苗字つけちゃおうみたいな。

 

緒方 うん。普通だと「libido:っていうキラキラネームが嫌だから、「それ自体変えます」なんだろうけどね。

 

一同 笑

 

緒方 うちらはね、libido:残そうっていうね。では、そろそろ個人のお名前をお願いします。

 

岩澤 libido:代表の岩澤哲野と申します。代表って肩書にしたんだよね。

 

緒方 もともと主宰だったの?

 

岩澤 そうそう。主宰にしてたんだけど、それも嫌だなって。ぼく自身が松戸出身で松戸を拠点にしたこともあるし、今後いろいろと代表的な人がいた方がいいだろうってことで、代表をやっております。

 

緒方 なるほど。じゃあ続いて、50音で行きますか。

 

大蔵 私か。大蔵です。大蔵麻月です。

 

大橋悠太 大橋悠太です。お願いします。

 

緒方 緒方壮哉です。今日は進行もやってね。肩書は、進行です。

 

鈴木 鈴木正也です。

 

岩澤 あ行が多いんだよな。

 

緒方 正也以外、全員あ行ですもんね。

 

大蔵 確かに。

 

鈴木 あんまりないよね。

 

緒方 年齢的にはね、みんな同世代といえば同世代ですけどね。ちょっとばらつきもある。

 

岩澤 そうだね。

 

鈴木 麻月さんって、青い鳥の初演以前(以降、2017年の青い鳥に関しては『』付とする)は、libido:に関わりはなかったんですか?

大蔵 ない。

岩澤 意外とね、麻月のことは、学生時代から存在としては知ってたけど、でもあんまり接点はなかった。

大蔵 そうですね。

岩澤 でも他の芝居を見て気にはなってて、『青い鳥』で初めて呼んだ。

緒方 それ意外なんだよね。はっしー(大橋)は?

大橋 テツさんは大学の先輩だけど、当時は全然接点はないかな。あ、”ACT-F”(キラリふじみ・リージョナルカンパニーACT-F)か。

岩澤 あ、そうだね。

大橋 地元の劇団(埼玉県出身)での繋がりかな。

岩澤 それで、『青い鳥』のキャスティングで大橋の名前があがった。

緒方 なるほど。

岩澤 壮哉と正也は木ノ下歌舞伎ではじめましてだね。

緒方 そうですね。2017年の「東海道四谷怪談-通し上演-」ですね。その直後に『青い鳥』があったんですよね。

岩澤 そうそう。

緒方 それで正也だけ呼ばれたわけです。

岩澤 笑

大蔵 へー。

岩澤 木ノ下歌舞伎でずっと仕事してて、ようやく自分より年の若い子たちが来るようになった。その中でも二人のことはずっと気にしてて、一緒にやりたいなって思ってたんだけど壮哉はタイミングが合わなかった。

緒方 僕はみんなが利賀行ってる間、日暮里で野球やってました。

岩澤 笑

大蔵 その時って学生?

鈴木 学生。

緒方 ですね。なので、ぼくってlibido:の歴史から一回外れてるんですよ。

岩澤 そうだね。

緒方 ぼくだけ利賀に行っていないという笑。でも、ある程度、出自や環境もバラバラな人間同士で今みたいに集団化しようっていうのは、前々から考えてたんですか?

岩澤 いや、おれ自身、集団を作る気が全然なかったの。メリットをあまり感じてなくて。あくまでプロデュースユニットのほうが自分には合ってるって思ってたんだよね。

でも、2017年に利賀のコンクールで受賞して、鳥の劇場との縁が生まれそこでの研修事業があり、「呉将軍の足の爪」(以下、呉将軍。韓国、鳥取にて上演)につながった。その流れの中で集団への意識が深まったね。

大蔵 なるほど。

岩澤 それで、集団化しようと決めた時に、まず声をかけたのがいまのメンバー。

緒方 ふ~ん、なるほどね。まあ、なんでぼくらなんだっていうのは置いといて。それは面白いですよね。あくまで演劇における集団ってサークル的に学生とか友達の関係によって発生するイメージがある。ぼくはそれがいいか悪いかというよりさらに偶然的に出会ったことに興味があるんだよね。みんなってなんでlibido:はいったの笑?

大蔵 わたしは、下心っていうか、あの、、、、テツさんって海外とか地方とか色々なとこ行く人だから。

 

一同 笑

緒方 「行けるぞ!」って。

岩澤 私の強みですからね。

大蔵 そう。「え、(呉将軍で)韓国行けんの?」みたいな。

鈴木 笑

左から大蔵麻月、鈴木正也

大橋 すごくわかる。

 

緒方 そもそも呉将軍の稽古期間中に、テツさんから「沖縄行くんだけどさ」っていわれて「いきます」と。

 

一同 笑

 

大橋 そうそう。それで「沖縄良いですね」と。

 

鈴木 そっか、そのころに沖縄の話はもう聞いてたんだ。

 

大蔵 テツさんがエサを撒き、それに釣られた人達。

 

一同 笑

 

大蔵 もちろんそれだけの理由じゃないけど。

 

緒方 はっしーは?

 

大橋 えぇー、おれは、、、、。

 

緒方 今のところはっしーのボヤキしか入ってないよ笑。

 

大橋 確かに。がっつりしゃべってないね笑。

 

緒方 一番はっしーって、集団とかに入ってるイメージが無いんですよ。

 

大橋 自分でも全くなかった。で、「ano」(大橋悠太と吉次匠生による集団。2018年に結成。amanouzume.jimdofree.com)を立ち上げたのはもともと知り合い3人で「一緒に公演をやりたいね」って話で。

そもそも団体化とかの予定は無かったんだけど、libido:に誘われるより前にその話があった。でもその時に、1人が抜けちゃって、「そいつが戻ってこれるまで頑張ろう」って残った2人で話になったんだよね。

 

一同 へぇー。

 

大橋 で、そのあとにテツさんから誘われた。libido:にまだ客演していた時期に、鳥の劇場とかで色んな人との出会いもあったし地方に対しての興味もあったから、「ここ(libido:)にいることで自分に学べることがあるんじゃないか」と思って入った。

 

緒方 なるほどね。

 

岩澤 他にも、スタッフで呼ぼうって人もいたりとか、色々話はあったんだけど、結果としては今のメンバーになったって感じ。

 

大蔵 正也はどう?

 

鈴木 家というか、ぼくの感覚はホテルなんですよ。たまに滞在できる場所。そういうと語弊あるけど。

 

緒方 いまのところ、たまにじゃないけどね。

 

一同 笑

 

鈴木 今はたまにじゃないけど笑。 だから家みたいに帰ってこれる、立ち寄れる場所みたいな所があった方が、ぼく的には演劇を続けていく上でいいだろうなあと思って決めた。

 

大蔵 RPGみたいな?

 

鈴木 RPG?あ、宿屋!そういう感じありますね。休憩って言うと違うかもしれないけど。

 

緒方 HPゼロになったら何もできないけど、冒険を続けるために宿とかセーブポイントは絶対必要だし、そういった自分の場所。そしてRPGにはパーティーがある。

 

岩澤 それぞれがいちアーティストとして集まれる場所があれば良いなと思ってる。

 

大橋 ぼくもそれにすごく共感したというか、自分で集団をやろうとしていたからこそ、他の場所も認めつつ、別の人たちとも一緒に居れる空間、場所みたいなのが良いなと思った。

 

緒方 麻月さんは?

 

大蔵 一番の目的は、いろんなところに行けるから笑。あとは松戸っていう場所に新しい建物ができたりして、いまキテるから。

 

鈴木 新しい建物?

 

岩澤 いま、松戸の街って文化によって再興しようとしているんだよね。そもそもずっと日陰の街で、高度経済成長で一度盛り上がり、停滞した感じがした。周辺の市川とか柏とか船橋っていう場所はそのまま変わり続けたんだよね。でもいまその再興の影響あってか、また若いひとたちが増えはじめてる。

左から岩澤哲野、大橋悠太、緒方壮哉

都市/地方における芸術

緒方 2017年に利賀のコンクールで受賞して以来、韓国、鳥取など地方での公演が目立ちますよね。そして集団化し、沖縄でも上演をしますよね。今年はこまばアゴラ劇場でやりますが、あまり東京でやらないじゃないですか。libido:は地方や海外での公演をメインにしていきたいんですか?

 

岩澤 利賀に行った当時、これから演劇を続けていくことが自分にとってなんなのかを考えていた。東京という都市の中で作品が消費され、競争の中で誰よりも良いもの、良い評価を得るためのものをつくればいいのか。なんのために演劇をやるのか、やりがいが見出せなくて悩んだ。20代はそれでも良いけど30代に入って演劇を続けていて良いのかを結構悩んだ。そんな中、演出助手として行った地域や地方に可能性を感じたんだよね。都市とは違うサイクルで、他者に関わりを持てるっていうのがおれにとって演劇を続ける意味になるんじゃないかって思った。

だから、これから演劇を続けていくために、演劇をやる意味を持つために地域に移っていったっていうのはすごくあるね。

 

緒方 なるほど。麻月さんは東京出身ですよね。

 

大蔵 10年前くらいに都心から足立区に引っ越して、住む前は治安の悪い場所としか思っていなかったんだけど、住んでみて良い場所を発見できたりもした。

拠点にしている松戸とわたしが住んでいる足立区って常磐線とか千代田線で繋がっていて、今回ツアーで回る百景社アトリエのある茨城県の土浦市も常磐線で行けるんだけど、足立区や松戸市、土浦市とか関東の右上の方が、線路みたいに繋がって面白くなれば良いなと思ったね。

 

緒方 場所って行かないとわからないこともあるよね。俯瞰しないと分からないこともある。社会的なイメージとか文脈によって、認識してしまっていることもある。だから行ってみるとおもしろかったり、肩をすぼめることもある。

 

大蔵 libido:のメンバーになって実際に松戸に行って、せんぱく工舎だったり美味しいパン屋だったり、「松戸にこんな場所あるんだ」、「こんな良い街なんだ」って思ったよね。

 

岩澤 おれは「松戸はもうダメかもしれない」と思ってた時があった。でも、鳥の劇場での研修授業で地元を改めて調べたときに、「あれ!」って思って。それは、住んでいても気付かなかったこと。

 

緒方 近すぎると分からないことありますよね。

 

大橋 何にもないと思っちゃいますもんね。自分の地元って。

 

鈴木 確かに。

 

大橋 ぼくも大学入ってから、平田オリザさんについてちゃんと知って、びっくりした。

 

鈴木 確かに、ぼくも大地の芸術祭とか大学入ってから知ったもん。

 

岩澤 だからこそ地方に可能性があると思う。住んでいる人たちが地元のアートに気付いていないこともある。そこにやりがいを見出だせる。知らない人たちにどうやって届けて、生活を豊かにしていけるかっていうのが、地域だからこそのやりがいでもある。そのうえで、異なりながらも同じ現実を共有するひとたちと、新しいものを築いていく可能性をもった世界での活動も視野に入れていきたい。

 

緒方 今世界はさまざまなものが密集してて、なんでも流通し、情報も得ることができ、体験することも出来るけど、実際に現実を生きているとそれによって分断されている何かがある。

「芸術っていったいなんのためにあるのか」っていう根本的な疑念があるからこそ、いま必要なのかもしれないよね。これ語弊あるかもですが。

 

岩澤 うんうん。

 

#2に続く(11月21日配信)

収録=2019年10月18日 神奈川、某所 

撮影=libido: 

編集・構成・デザイン=緒方壮哉​ 

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